マイナーの誇り

上田・慶応の高校野球革命。情熱監督と選手たちを追ったドキュメント。
辰濃哲郎著
【定価1,575円(税込)送料290円】ISBN4-8172-0236-X C0075
- 序 もう一つの涙のわけ
- 慶応野球部のキャッチフレーズの一つに、「エンジョイ・ベースボール」がある。だが、彼らの野球を見ていて、ただ「野球を楽しむ」ことではないことがよくわかる。 監督の上田は、選手に自主性を求めてきた。そのために、古い精神野球を捨て、上級生、下級生の厳しい上下関係を壊し、そして新しい野球理論を「学問」として選手に伝えようとした。その集大成がエンジョイ・ベースボールなのだ。 上田は本気で高校野球の常識を覆そうとしている。彼の目指す野球とはどんなものなのだろう。それを知って初めて、決勝の敗戦で流した選手たちのもう一つの涙の理由を理解することができるのだと思う。 05年春の関東大会からチームを追いかけて1年がたった。これは高校野球界に「革命」を起こそうとしている上田・慶応の1年間にわたる取材記録だ。(抜粋)
- 第1章 上田・慶応が目指す自主性
- 高校野球の常識破り、上田が目指す自主性とは、意味のある声出し、監督を信用するな、暗がりの選手ミーティング
- 第2章 それぞれの自主練習
- 制服姿での吉報、サヨナラの走塁、サインの見落とし、苦い経験
- 第3章 精神野球への決別
- 巨人の星、慶応大学での上田との出会い、人の上に人をつくらず?、補欠の屈辱、慶応高での初仕事は上下関係の解消、3年生のバットボーイ
- 第4章 上田流野球哲学
- 合い言葉はエンドレス、併殺?いいじゃないか、野球は9回で争うスポーツだ、エンジョイ・ベースボール
- 第5章 米国留学
- ベースボールとは、野球は学問
- 第6章 チームが勝つために
- 長谷の抵抗、自分にできること 谷地俊太郎の場合
- 第7章 人間 上田誠
- マイナーを平等に扱え、ひらめき、監督の謝罪
- 第8章 マイナーの誇り
- 30人切り、メンバー選考会議、「共同作品」
- 第9章 上田を支える者たち
- コーチの忘れ物、ケミストリー、胸にかけられたメダル、鬼の新人監督
- 第10章 05年・夏
- 歴史を変えよう!、試練の茅ヶ崎戦、フライは500円の罰金だぞ、準決勝前の喝、そして決勝
- 第11章 エピローグ そして挑戦の夏
- 黒い人影
- あとがき
- 取材を進めながら、無意識のうちに控えであるマイナー選手の心の葛藤に関心が移っていくのがわかった。
メジャーになれなかった選手たちが、自分たちの代表を決めるメンバー選考会議の場に立ち会わせてもらったことが、この本を書く強い動機になった。
「マイナーがものを言え!」「グラウンドでは上級生下級生はない」「メジャーとマイナーの共同作品の最大公約数は勝つことだ」「ベンチにいるものが試合を勝たせるんだ」
上田監督の言葉を、選手たちは見事に実践していった。メジャー選手の活躍は、こういったマイナー選手に支えられている、いや、マイナー選手こそが「主役」なのかもしれない。
上田監督が最終的に目指すものは、選手の自主性だ。大人として扱い、正面から向かい合うことで、選手が持っている個性が表れる。そして選手たちは、個である自分自身と向かい合うことを余儀なくされる。そこにそれぞれの誇りが生まれる。
負けたとしても、部員全員が胸を張れるプライドを、上田監督は植え付けたいのだと思う。
これが私なりの結論だ。(抜粋)
- 巻末資料 05年度慶応高校野球部員名簿
- 著者紹介
- 辰濃哲郎(たつの・てつろう)
1957年(昭和32)生まれ。77年慶応大学入学、同時に野球部入部。慶応高上田監督は、慶大野球部時代の同期になる。81年3月卒業、同年4月朝日新聞社入社。大阪、東京本社社会部記者として取材を続ける。04年退社してフリーに。医療問題などのルポ中心に手がけている。




